7月9日の記載に「ほんとうに撮りたい写真は撮れない」と書きました。
肩の痛みに悩みながら、電車とバスを乗り継ぎ「野鳥の楽園」なる所に行きました。
行けども行けども、何もない遊歩道があり軽いはずのカメラもかなり身にずっしりと堪えました。
鳥の姿などまるでなく、トボトボと歩いているとずうっと遠くに白い鳥が見えました。
どうやら白鳥のようで三羽がのんびりと毛づくろいをしていました。
足元に鴨もいて同様に毛づくろいをしています。
一羽が痩せているようにも思いましたが、漫然とシャッターを数枚切りました。
気が付くと、前方に女の人が立っており、やはり白鳥を見ていたのでしょうかなかなか動こうとしません。
険しい顔をしているので訝りましたが、結構疲れており気にもせず歩いて行きました。
まあ、それこそ何もない緑の壁が淡々と延々と続きます。
途中では弁当を広げている家族もいました。
時折ジョギングするおばさんたちや、自転車の親子連れがやってきます。そう、今日は日曜日なんですね。
途中に野鳥観察舎の標識が立っており、あと700メートルとあります。
どんどん進むと、急に建物が現われ視界も開けました。野鳥観察舎ですね。バードウオッチング用の望遠鏡が二階に見えています。
残念ながら鳥達は遥かかなたにいて、とても写真に撮ることはできません。
あちこちカメラを向けていると、ネットの張られた小屋が隣にあるのに気付きました。
野鳥の病院とありました。
そういえば途中の標識にも「野鳥観察舎、野鳥の病院」と書かれていましたね。
どうやら、病気の鳥や怪我をした鳥を保護している所のようです。
かもめやふくろうが見えます。ふくろうは昼はお休みらしく、静かにと書いてあります。
詳しくは読みませんでしたが、「心をオニにして」という張り紙がありました。
手作りの写真と解説があちこち貼られています。「しずかに見てください」ともあります。病院なんですよね。
初めて見るハヤブサは、突然の来訪者に怯えていました。しずかにしずかに、そっとそっとカメラを向けシャッターを切りました。
鷺も居ましたが、こんなに間近で見たのは初めてです。
ここは動物園ではありません、病院なのです。彼らの静けさは病めるものの静けさなのでしょう。
大きな総合病棟の隣には、猛禽類用の単舎がありました。
中には数羽の鳥がいました。パネルの説明にはオオワシ、オオタカ、トンビとあります。
どうやら数羽はトンビのようですね。なるほど大きい。
鳥たちはじっとこちらを見つめています。
真ん中の鳥はちょっと様子がおかしいのです。胸のあたりがピンクっぽいようにも見えます。
そっと近づいて見ると、ああガムテープでしょうか翼の付け根がテープで貼られているようです。
手前の鳥も横にいる鳥も、じっとこちらを見つめています。
良く見ると、羽がブルブルと小刻みに震えています。
大空を勇者のごとく飛んでいた彼らは、今は成す術もなく震えているのです。
人間は生きるために多くのものを犠牲にしています。巨万の富を得た人たちは弱者を踏み台にしてはいないでしょうか。
人間は文明と引き換えに、何を得そして何を失ったのでしょう。
彼らの目は何処までも真っ直ぐで、そして澄んでいました。
カメラは向けられませんでした。
そっとその場を去ったのは言うまでもありません。
帰宅し、画像を見ていたら
白鳥の姿がありました。
撮っていた時には全く気付かなかった事実が、そこには写っていました。
無心に毛づくろいをする一羽の白鳥には、
羽がありません。
カメラは知らない内に、悲しい現実を写し撮っていました。
もし、わたしが天使だったなら
翼をあげたい。
※ 偽善者の私は、帰ってきてすぐに3千円を送りました。貧乏だけど、何故かそうしたかったのです。
後日丁寧な礼状だったかハガキだったか・・・届きました。