決着までに7年あまりを要したヒグマ駆除をめぐる行政訴訟。3月下旬、最高裁判所が言い
渡した確定判決で猟銃所持の許可を取り戻した北海道のハンターは、この長い闘いを「意
義のある7年間だった」と振り返った。 【動画】北海道に出没するヒグマ ところが、その
“完全勝利”の直後、思いもよらぬ事実が明らかになる。押収されていた猟銃のうち、最も
重要な1挺──まさにヒグマ駆除に使用され、許可取り消しのきっかけともなった銃が、あ
ろうことか捜査機関に「廃棄」されていたのだ。 関係者の誰もが耳を疑ったこの事態に、
当事者の憤りは収まる気配がない。最高裁判決から現在までの経緯を整理する。(ライタ
ー・小笠原淳)
「考えられないよ。よりによって、絶対に保管しておくべき1挺を廃棄するなんて…。どう考えてもおかしくないか」 北海道猟友会・砂川支部長の池上治男さん(77)は、そう憤りをあらわにする。長く続いた行政訴訟で代理人をつとめた弁護士からこの事実を知らされたのは、4月中旬のことだった。 「検察が銃を廃棄してたと。理由は、私が廃棄に同意したからだって。何をか言わんやだ。一貫して『銃を返してくれ』と言い続けて裁判まで起こした人間が、廃棄に同意なんてするわけないでしょう。終わってるよ、警察も検察も」 半月前の勝訴の喜びから一転、「ハンターの魂」を取り戻したはずの池上さんは、再び深い失望に突き落とされた。
ー中略ー
謝罪を表明した公安委が銃の返還を申し出るのは、3日後のこと。連絡は警察を通じておこなわれた。その電話でのやり取りを、池上さんはこう振り返る。 「電話は滝川署からでした。当時、私の銃を取り上げた砂川署はその後の統廃合で滝川署に吸収されていた。で、用件を聞くと『銃をお返ししたい』と。直接やり取りして『言った・言わない』とかになると嫌なので、それ以後の交渉は代理人を通すようにと伝えました」 代理人の中村憲昭弁護士は3月30日、警察側に「オープンな場での銃返還」「対面での謝罪」を求めた。これを受けて、警察・公安委はおよそ1週間を経た4月8日、いずれも受け容れるとの意思を表明し、翌4月9日午前、報道陣が立ち会う形で謝罪が実現した。 しかし、その日に公安委員会のメンバーは一人も姿を見せず、訪れたのは、北海道警の保安課長だった。池上さんに笑顔は乏しく、眼の前で低頭する相手にこう尋ねている。 「公安委員会でなく、代理で来たんですね」 問われた相手は、しどろもどろにこう返すので精一杯だった。 「代理と言いますか、公安委員会の事務をやっておりますから…」 池上さんは「本当に反省しているとは思えなかった」と振り返る。銃の返還について報道陣に感想を問われても、表情は硬く「戻ってきてうれしいとか、そういうことはない」と言い切った。 「だってね、当たり前の状態に戻っただけなんだから」
もっとも、池上さん本人は「戻った」としているが、その「当たり前」すら完全には回復されていなかった。 取り上げられた猟銃はライフル3挺、散弾銃1挺の計4挺。このうち2挺はすでに「返還」されたことになっているが、持ち主の銃所持が認められない状態だったため、取り扱い資格を持つ地元の銃砲店に預けられた。池上さんは、店に負担をかけたくないとして、いずれの銃も店へ「譲渡」した。 つまり、残る2挺について、所持許可取り消しの撤回を求める裁判を起こすことになったわけだ。では、4月9日に返還された銃は2挺あったのか。否。北海道警の課長らが持参した銃は、1挺のみ。残る1挺について説明がないまま、謝罪の場は終了した。 その1挺こそ、「銃はハンターの魂」と語る池上さんにとって特別な意味を持つ銃だった。2017年春、若くして亡くなった登山家であり猟師の知人から託されたライフルだ。 最後に面会が叶った際、病床の友に「使ってくれないか」と請われ、その場で「わかった、人のために役立たせてもらう」と約束を交わした。仮にほかの3挺が戻らなくとも、その1挺だけでも返してもらわなくてはならなかった。 公開謝罪から一夜明けた4月10日、代理人の中村弁護士が、銃を保管しているという札幌地検に問い合わせた。その4日後、返ってきたのは、耳を疑うような衝撃的な回答だった。 「適正に廃棄しました」 理由は「所有権放棄書へ署名をもらった」ため。では、その「所有権放棄書」を見せてほしいと求めると、「不起訴記録なので閲覧・謄写はできません」というのだ。 そもそも池上さんが、いつ放棄に同意したのか、実際に破棄されたのはいつごろなのか聞いても「お答えできない」ということだった。

「適正に廃棄」の経緯は、現時点で充分に説明されていない(滝川市の札幌地方検察庁滝川支部=2026年1月撮影)
裁判で問題となったヒグマの駆除行為があったのは、2018年8月。警察はその2カ月後に突然、池上さんに銃刀法違反や鳥獣保護法違反などの容疑をかけ、猟銃4挺を押収した。 事件は翌年春に書類送検されたが、札幌地検滝川支部の出した結論は、不起訴。上に引いたやり取りで検察の担当者が「不起訴記録」という言い回しを使っているのは、つまりそういうことだ。 廃棄されたとみられる銃は、持ち主の池上さんの思い入れが深い1挺であるのみならず、捜査機関にとっても不起訴事件の重要な証拠品となる1挺だった。中村弁護士から検察の報告を伝え聞いた池上さんは「私が放棄に同意するわけがない」と怒りを込める。 「同意なんてするわけないことは、先方もよく知っているはず。不起訴が決まった直後の2019年3月に、私は自ら旧砂川署へ赴いて『鉄砲を返してくれ』と頼んでるんですよ。しかし先方は『不起訴といっても起訴猶予とかのケースもあるから…』とか言って返還を拒んだ。 少なくともその時点で、私が銃を返してもらいたがっていると認識できていたはずでしょう。それをどうしたら『放棄書に署名』なんてできるんですか。もし事実だとしたら、警察や検察はこちらに十分な説明をせずに『騙し討ち』で書類にサインさせたことになる。詐欺ですよ」
ー後略ー
まあ、いろいろ考えるに
責任をかぶりたくない、そう言う気持ちが満ち溢れていると思います。
※ 個人の意見です、お間違えの無いようお願いします。